
「もしかして沙弥さん? きゃはははは!」
いつも思うんだけどひとを指差して笑うのは教育者としてどうなんでしょう。
「うーん。金糸と銀糸の反発の中和ねぇ。」
ラサ先生は口元に手を当て首をかしげる。
「研究に足りないものがあるのよ。それを持ってきてくれたらアドバイスしてあげる。グリーンユースポーションとイエローユースポーションを10本ずつ。それとブラックユースポーションを1本お願い。」
げ。
イエローとグリーンは裁縫者として当然いくらかストックがあるけどブラックはなあ。さっきゅんだっけ。そんなご無体な。わたしゃヒールすらないんだよ。しょうがない、露店で探すか。
露店で200K(女神木刀の売り上げの3分の2。とほほ。)で買ったブラックユースポーションとその他ご所望の品を持って再びティルコの魔法学校へ。
「うん。間違いないわ。ご苦労さま。じゃ約束どおり中和ポーションのレシピを教えてあげる。ディリスのところにいって調合してもらってきて。材料は渡してあるから。」
「ヒーラーの家へようこそ。あれ? 沙弥さん、なんか疲れてませんか?」
はい、200Kの精神的ダメージが大きいです。
ラサ先生からの手紙をディリスさんに渡すと、
「話は聞いてます。ちょっと待ってください。」といって薬品棚から謎のポーションを取り出した。
うわ、不吉な国防色だよ。泡までたってるよ。マジですか。
魔法学校に帰ると魔法の銀の糸を5本渡された。
「これとそのポーションで布を織ってみて。大丈夫なはずだから。紡織は私がやるより沙弥さんがやったほうが確実でしょう?」
む。ティルコの雑貨屋って織機ないじゃん。ケルラベースキャンプでさえあるのに。マルコム、設備投資しろよ。
しょうがないのでダンバに戻って紡織。シモンさんに中間報告しようかと思ったけどやめた。できてから見せびらかすことにしよう。
おおう。一発成功、って失敗したらもう一度ティルコと往復か、よかったよかった。
銀色の派手な布ができあがった。金属光沢ではなくあくまで布のつやで、薄いわりには丈夫そう。手触りは安いシルクみたい。
これでクロスメイルか……。うーん。やっぱり革とあわせてレザーメイルのほうがよさげ。とりあえずラサ先生に見せに行くか。
ラサ先生に見せると
「思ったより薄いわね。でもそのわりに丈夫そう。衣装に使うとしたらどういうのができそう?」
そうですね、派手派手なので儀式用のユニフォームや伝統衣装のアクセントに使ったらどうですか。メインで使うには費用対効果が悪すぎますよ。それよりは刺繍でもして民芸品にでもしたほうがいいと思います。
「それもそうね。あとでケイティンに相談してみよう。ところでさ。」
はい?
「持ってきてもらったユースポーションを研究したらね、ポーションの調合比率で金糸、銀糸から作る布に魔法の効果が付きそうなのがわかったの。この前のポーションは魔法をただ中和するだけだったんだけどね。面白そうでしょ。」
おー、それが魔法の布か! 確かに面白そう。
「でしょでしょ? 詳しくわかったらレシピあげるから、それまで調合のランクあげといてね。」
魔法の布に想いをはせつつダンバに戻り、シモンさんに報告、魔法の銀の布を渡す。布をひとしきり眺めたあと、
「これで手袋作ったらどうかしらね。手首には金の細いリボンで。」
おおお、なるほど。さすがシモンさん! 目の付け所が違う。
「ブーツにも同じように細いリボンをつけてAラインのふわっとしたコートなんかいいわね。すそと袖口にフェイクファーを付けて。」
むむ。デザインのツボに入ったらしい。しばらくはバイトも忙しくなりそうだ。とほほ。クエストクリアしたんだから少しくらいねぎらってくれてもいいじゃんか〜。